toi.toi.toi.

I am a Singer

ボーナスステージ。

小学生の頃からの習いごとは

お習字、新体操、公文、水泳、ピアノ、、、だったかな?

あ!あとスキーもだ。

やらせてもらっていて

 

それは全て、母親が決めてきたものばかりだったのですが

 

初めて

『歌を習いたい』と、母にお願いしたのが

中学一年の時でした。

 

ヤマハ音楽教室のパンフレットを自分でもらってきて

ピアノの代わりに歌をやりたい、と

勇気を出してお願いしたのです。

 

我が家はね、音楽聴く人いない家だったんです。本を読む家族でした。

 

とりあえず、歌を習うことの許可は得ましたが

特に母は

「歌なんて歌ってどうするの?

なにになるの?」というスタンス。

 

それは私が専門学校へ進んでも

CDデビューしても

 

母として、娘の応援はしてくれていましたが

「歌ねぇ。。。お母さん、わかんないわぁ」は

相変わらずでした。

 

歌いたいと思う気持ちを

どうしてなのか、なんて説明できなくて。

ただただ胸を焼き焦がすような、あの感覚を

伝えることはできなくて。

 

反対されたわけではなかったけれど

なんとなく寂しい気持ちでした。

そしてその寂しい気持ちは

あたりまえになっていって

寂しい気持ちなんて

なかったかのように忘れてしまって

普通のことになりました。

 

私の歌のことは、誰も触れない。

話題に上らない。

それが普通。

 

 

 

それが

つい先日。

 

 

洗面台の鏡ごしに

母と、なにげなく

姪っ子めいちゃん(3歳)の話をしていて

 

私が

 

「めいは、なにか習いごとするのかなぁ。

バレエとかピアノとか

女の子らしいの好きそうだよね」

 

 

と、言ったら

 

 

母は

笑顔で

 

「歌もいいじゃない」と言ったのです。

 

持ったまま固まった右手のドライヤーの温風が

私の髪を吹き上げました。

 

 

あれほど

歌なんて歌ってどうするのか

歌って、なにになるのか

 

と言っていた母が

 

私を見ながら楽しそうに笑って

「歌もいいじゃない」って 

 

言ったのです。

 

私はドライヤーの向きを変えながら

すぐに「そうだねぇ。」と応えましたが

 

心の中では

リフレインが叫んでました。

 

 

 

『歌もいいじゃない』

 

 

 

なんかね、なんていうかね

 

本当に本当に、嬉しかった。

 

言葉にできないほど

嬉しかったのです。

こんな日が来るなんて想像もしていなかった。

普通になっていた寂しさは

その瞬間に

くっきりと浮かび上がって

次の瞬間に

はらはら流れていきました。

 

きっと母はずっと

歌の話をしたかったかもしれない、と

本当は思います。

ほんのちょっとした寂しさや恥ずかしさを

意地で囲って蓋をしたのは

幼い私だったかもしれません。

 

でもまぁ

若き日の母も

意地っ張りで、聞き下手でしたしね。

おあいこです。

 

 

近頃の母との暮らしは

まるでボーナスステージのようです。